○定住対策・テンミリオンプロジェクト              秋田県仙北市

 

仙北市では合併による新市の総合計画の中に、定住対策と観光客誘致など3つの
重点プロジェクトとして盛り込んだ。

1定住対策プロジェクト

2テンミリオン計画プロジェクト

3産業連携プロジェクト

平成19年4月、時限的に重点プロジェクト室を設置。

今回の視察では上記1及び2について視察させていただいた。

 

1 定住対策プロジェクト

  ・平成17年、旧田沢湖町、角館町、西木村の3町村が合併して仙北市が誕生。

  ・人口は年々減少。20年前の3万8千人から現在では3万1千人台へ。老齢人口

   の増大(31%)、少子化も深刻な状態にある。一方、田沢湖や角館など観光資源

   に恵まれ、産業構造でも飲食店、宿泊業の割合が高い。

  ・定住対策プロジェクトでは、雇用の場の確保に関する諸施策のほか若者やUター

   ン希望者の受け入れ体制強化、子育て・保育、地域医療ネットワークの充実で子

   どもを産み育てる環境の整備に取り組み、また団塊世代の受け入れについて検討

   する。さらに住宅の整備を行う。

  ・具体的な推進事項

   ☆空き家情報の調査収集

    →8月、空き家情報調査を行った。現在12軒が「空き家バンク」に登録。

    →市は情報提供のみ。あっせんは行わない。

   ☆遊休農地の調査、活用策検討

   ☆NPO法人等へのアプローチ

    →「のんびり暮らしたい」人が定住を希望する。

   ☆美の国あきたネット(県の事業)へのリンク

   ☆団塊の世代対策

   ☆スローライフモニターツアー体験事業

    →19年8月スタート。19年は実績なし。

    →20年チラシを配布し問い合わせが増えた。今秋も計画。15名程度募集。

   ☆短期おためし滞在を今年度からスタート、奨励金制度も設けた。

    →指定の空き家をモデルハウスとして活用。1〜2週間程度の滞在で、地元の

     人との交流、農作業体験、相談会。

   ☆固定資産税を3年間交付する措置を講じた。

   ☆首都圏でのPR活動、ふるさとサポーター制度を実施。

   ☆定住対策懇談会の開催。委員12名。年4回開催。

   ☆市HPに定住応援情報「えぐきてけだんし」、市役所に定住相談窓口を設置。

 

2 テンミリオンプロジェクト

  ・テンミリオンは「1千万」。現在、仙北市の年間観光客数は620万人。これを1

   千万人に増やそうとの計画。

  ・これまで、冬にはスキー客が多く訪れ、スキー場も4ヶ所あったが、若者のスキ

   ー離れにより、今では1ヶ所だけとなった。

  ・さくらまつりも例年140万人の出足だが今年は116万人。ほかにミズバショ

   ウ見物87500人、カタクリ群生地に18000人など。

  ・これらを踏まえ、正月行事として風船上げなどを企画。また冬のイベントを長期

   間化して冬の来客を増やしたい。

 

3 感想

  重点プロジェクトの目標達成のために設置されたプロジェクト推進室は19、20

 年度の2ヵ年の時限設置。今年度をもって解体するとのこと。この2年間はいわば「旗

 振り」役として推進室が機能。各課の連結役、推進役を果たす。その後もこの3点は

 市挙げての政策とするが、各課が連携、手分けして進めることとしている、とのこと

 です。

  東京からは新幹線が直行しており、所要3時間余。定住にしても観光誘致にしても、

 首都圏がターゲットとなるのだと思います。

  新市総合計画に掲げた重点プロジェクトの実現のためにあえて推進室を設けた点に

 関心を抱いての今回の視察でありました。定住対策の具体案としての空き家情報と、

 これを活用しての「お試し滞在」はユニークな取組と言えます。しかしあくまで情報

 提供までの業務ということで、定住実現に結びつけるまでには課題も多いように感じ

 ます。その背景には、私たちが香川の丸亀市に住んでいて感じ取れない深刻な人口減

 への危機感があるのだと思います。

  観光誘致については、田沢湖、角館という全国に名をはせる資源があり、圧倒的な

 動員力であろうと思っておりましたが、スキー離れなどは深刻な事実と受け止められ

 ています。観光の形態、ニーズも時代とともに変化し、単に名所があるというだけで

 安閑としていられない状況が伝わってきました。

  合併により、田沢湖町と角館町がひとつの市となったことで、その連携も容易にな

 ったと考えられます。だから私たちの町でも琴平、善通寺などとの合併を、と短兵急

 にはまいりませんが、まずは広域で観光開発に力を入れることが急がれるのではない

 でしょうか。

  プロジェクト推進室が今年度末をもって解体されることについては、相当の考慮が

 あったのでしょうが、来年度からの各課の連携がスムーズに図られるのかが課題だと

 思います。定住対策では企画政策課、長寿子育て課、保健課、商工課、農政課、都市

 整備課などが連携。テンミリオンでも観光課、企画政策課、農政課、農村整備課、商

 工課、学習旅行支援室、建設課、文化財課の各課が連携しているとのことで、これら

 をまとめていくのは容易なことではありません。むしろ、その中心をなす推進室を設

 けたとしても、どこまでまとめていいのかに苦しむという一面もあるのでしょう。良

 くも悪しくも縦割りが常識となっている行政機構につきまとう根本的な課題でもあり

 ます。克服していかなければならない課題です。

  総合計画といえば先日も一般紙に、総花的で市民から遠い存在の代表として揶揄的

 に書かれておりました。丸亀市の総合計画でもできるだけ数値目標を取り入れるよう

 に心がけて策定されたところですが、仙北市における観光客「1千万」というのは現

 状数値に照らして意欲的であると思います。問題は推進室解体の後、どこの課がどの

 ように責任を負うのか、というところが不明確になりがちな、非常に大きな目標設定

 であることです。仙北市の今後の取組に注視するとともに、わが市においても、機動

 的で横断的な目標管理への仕組みづくりについて考察することが重要だと思います。

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